外出先での作業中やカフェでのリモートワーク、あるいは自宅でスマートフォンの充電器が足りない時。「モバイルバッテリーをコンセントに挿し、そこからスマホにもケーブルを繋いで充電する」という使い方をしたことはありませんか?
これは「パススルー充電」と呼ばれる非常に便利な機能です。しかし、一部では「バッテリーの寿命を縮める」「危険な使い方だ」と囁かれており、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
「せっかく買った高価なモバイルバッテリー、間違った使い方ですぐにダメにしたくない」
「Ankerやエレコムなどの有名メーカーなら大丈夫なの?」
そんな疑問を持つあなたのために、本記事ではガジェットのプロとして、パススルー充電の仕組みから、なぜ劣化すると言われるのか、そして劣化させないための正しい選び方までを徹底的に解説します。5000文字を超える詳細な情報となりますが、これを読めばモバイルバッテリーを長く安全に使いこなす知識が完全に身につくはずです。
記事のポイント
- パススルー充電そのものではなく「熱」が劣化の主原因
- Anker等の人気メーカー製品でも「ながら充電」のリスクはゼロではない
- UPS(無停電電源装置)用途で使うなら「瞬断しない」モデル選びが必須
- 劣化を抑える機能を持ったおすすめのモバイルバッテリーを選ぶ
モバイルバッテリーのパススルー機能が劣化につながる理由と仕組み

結論から申し上げますと、「パススルー機能がついているからといって、無条件に劣化するわけではない」というのが真実です。しかし、「使い方が悪いと劇的に劣化を早める」のもまた事実です。
なぜこのような誤解やリスクが生まれるのでしょうか。まずはバッテリー内部で起きている電気の流れと、劣化のメカニズムを正しく理解しましょう。
そもそもパススルー充電とは?バッテリーへの負担を正しく理解する
「パススルー充電」とは、モバイルバッテリー本体を充電しながら、同時に接続されたスマートフォンやタブレットなどのデバイスへ給電を行う機能のことです。
通常、モバイルバッテリーは「蓄電(入力)」か「給電(出力)」のどちらか一方しか行えません。しかし、パススルー対応機種は回路を工夫することで、この両立を可能にしています。
ここで重要になるのが、「真のパススルー」か「擬似パススルー」かという回路設計の違いです。
1. 理想的な「ロードシェアリング(バイパス)方式」
高品質なパススルー対応モデルの一部(主に高価格帯)では、コンセントから入ってきた電気を以下の2つに振り分けます。
- スマホへの給電用: バッテリーを経由せず、直接スマホへ送る
- バッテリー充電用: 余った電力でバッテリーを充電する
この方式の場合、スマホへ送られる電気はバッテリーセルを通らない(バイパスする)ため、モバイルバッテリー内部の電池そのものへの負担は最小限に抑えられます。これが「劣化しにくいパススルー」です。
2. バッテリーに負担をかける「充放電同時方式」
安価なモデルや古い設計のモデルに見られるのがこのタイプです。
コンセントからの電気で「バッテリーを充電」し、そのバッテリーから「放電してスマホへ送る」という動作を同時に行います。
これは、バケツに水を注ぎながら、同時に底の穴から水を出しているような状態です。バッテリー内部では化学反応が激しく行われるため、非常に大きな負荷がかかります。これが世間で言われる「パススルーは劣化する」の正体です。
Anker等の高性能モデルでもパススルー充電で劣化は避けられない?
「Anker(アンカー)なら性能が良いから劣化しないのでは?」という疑問をよく耳にします。
確かにAnkerは独自の充電技術「PowerIQ」や、多重保護システムを搭載しており、安全性は世界トップクラスです。
しかし、リチウムイオン電池という物質の特性上、メーカーに関わらず劣化のリスクは存在します。
特に注意が必要なのが、バッテリーの残量が100%に近い状態でのパススルー利用です。
Ankerなどの高性能なモデルであっても、バッテリーが満充電の状態で給電を続けると、以下のような現象が起こりやすくなります。
- トリクル充電の繰り返し(ミニサイクル): スマホへの給電でバッテリー残量がごく僅かに減り、それを即座にコンセントからの電力で埋め合わせるという、微細な充放電が無限に繰り返される状態。
これはバッテリーの「サイクル寿命(使える回数)」を無駄に消費する行為です。有名メーカーの製品は回路制御でこれを極力防ぐ設計になっていますが、物理的に電池を経由している以上、ゼロにはできません。
「ながら充電」による発熱がバッテリー寿命を縮める最大のリスク
パススルー充電で最も恐れるべき敵、それは「熱」です。
リチウムイオンバッテリーの最高許容温度は一般的に45℃程度と言われています。これを超えると、内部の電解液が分解したり、セパレータが劣化したりして、急激に寿命が縮みます。最悪の場合、膨張や発火の原因にもなります。
なぜパススルーは熱くなるのか?
パススルー充電(特にスマホを操作しながらの充電)を行うと、以下の3つの熱源が同時に発生します。
- ACアダプターからの入力による発熱(バッテリー充電の熱)
- スマホへの出力による発熱(DC-DC変換ロスの熱)
- スマホ本体の発熱(CPU負荷などの熱)
これらが重なり合うことで、モバイルバッテリー本体の温度は容易に40℃〜50℃を超えてしまいます。
「充電しながらゲームをする」「動画を見ながらパススルー充電をする」。これらはバッテリーにとって「サウナの中で全力疾走させる」ような過酷な環境なのです。
結論として、パススルー機能を使って劣化するかどうかは、「バッテリー本体が熱くなっているかどうか」で判断するのが最も確実です。
劣化を抑えてモバイルバッテリーのパススルーを使う選び方とおすすめ

ここまでの解説で、パススルー充電のリスクをご理解いただけたかと思います。
「じゃあ使わない方がいいの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。正しい機種選びと使い方をすれば、非常に便利な機能であることに変わりはありません。
ここからは、用途に合わせた選び方と、プロが推奨する具体的な対策をご紹介します。
UPS代わりに使うなら必須!「瞬断しない」パススルー対応モデルの条件
モバイルバッテリーのパススルー機能を、スマートフォンの充電だけでなく、「簡易UPS(無停電電源装置)」として使いたいというニーズが増えています。
例えば:
- Raspberry Pi(ラズパイ)などのIoT機器の電源として
- 防犯カメラやネットワークカメラのバックアップ電源として
- ドライブレコーダーの駐車監視用電源として
これらの機器は、コンセントからの給電が止まった瞬間(停電時など)に、モバイルバッテリーからの給電に切り替わる必要があります。
ここで重要になるのが「瞬断(しゅんだん)」です。
多くのモバイルバッテリーは「瞬断」する
一般的なパススルー対応バッテリーは、コンセントからの給電(入力)が途絶えた際、内部回路が出力モードに切り替わるまでに「0.1秒〜数秒」のラグが発生します。これを「瞬断」と呼びます。
スマホの充電であれば一瞬切れても気になりませんが、ラズパイやカメラなどの精密機器は、この一瞬の電源喪失で再起動(リブート)してしまったり、データが破損したりします。
「瞬断なし」を見分ける方法
残念ながら、スペック表に「瞬断なし」と明記されている製品は稀です。しかし、以下の特徴を持つ製品は瞬断しない可能性が高い、あるいは対策されています。
- IoTモード・低電流モード搭載機種: 常に微弱な電流を流し続ける機能がある機種は、出力が切れにくい傾向があります。
- メーカーが「パススルー」をUPS用途として謳っている機種: エレコムなどの一部製品には明確に記載があります。
- コンセント一体型(プラグ付き)モデル: AnkerのPowerCore Fusionシリーズなどは、構造的に瞬断が起きにくい設計(または瞬断しても影響が少ない高速切り替え)になっているものが多いです。
※厳密なUPS運用をする場合は、モバイルバッテリーではなく専用のUPS製品を使用するのが最も確実ですが、コスト面でモバイルバッテリーを使いたい場合は、必ず実機検証が必要です。
Ankerやエレコムはどう?メーカーごとのパススルー機能の特徴比較
パススルー機能に定評のある2大メーカー、Ankerとエレコムのアプローチの違いを整理しました。
Anker(アンカー):利便性とハイブリッド型の王者
Ankerの代名詞とも言えるのが「Anker PowerCore Fusion」シリーズなどのコンセントプラグ一体型モデルです。
- 特徴: 充電器とバッテリーが一つになっているため、日常的にパススルーのような使い方(コンセントに挿しっぱなしでスマホを充電)をすることが前提の設計になっています。
- メリット: コンセントに挿しておけば、まずはスマホが満充電になり、その後自動的に本体の充電が始まります。管理が非常に楽です。
- 注意点: 常にコンセントに挿しっぱなしにすると、満充電維持による劣化(保存劣化)のリスクはあります。
ELECOM(エレコム):日本メーカーらしい詳細な仕様公開
エレコムは国内メーカーらしく、マニュアルや公式サイトでの仕様説明が丁寧です。
- 特徴: 「まとめて充電」という名称でパススルー機能を紹介しています。
- メリット: 低電流モードなどを搭載したモデルが多く、イヤホンなどの小型デバイスへのパススルー充電にも強いです。また、安全性への基準が非常に厳しく、発熱対策もしっかりしています。
- 注意点: デザインが無骨なものが多いですが、信頼性は抜群です。
プロが厳選!劣化対策済みで安心なパススルー対応モバイルバッテリーおすすめ
最後に、劣化のリスクを抑えつつパススルー機能を使いたい方へ、選び方の基準とおすすめのタイプをご紹介します。
1. コンセント一体型(プラグ内蔵型)を選ぶ
最もリスクが少なく、メーカー公認でパススルー的な使い方ができるのがこのタイプです。
おすすめ:Anker Power Bank (30W, Fusion, Built-In USB-C ケーブル) など
これらは「家では充電器、外ではバッテリー」として使うことを前提に回路が組まれているため、過充電や発熱の制御が非常に優秀です。
2. 「多重保護システム」搭載モデルを選ぶ
過電圧、過電流、そして温度管理機能がついたモデルを選びましょう。
Ankerの「ActiveShield 2.0」などは、充電中の温度を常に監視し、熱くなりすぎると出力を調整してくれます。これにより、パススルー時の発熱によるダメージを最小限に食い止めます。
3. 入出力のW(ワット)数が大きいモデルを選ぶ
意外な盲点ですが、最大出力が大きい(30Wや65W対応など)バッテリーを、スマホ充電(10W〜20W程度)で使うと、回路に余裕があるため発熱しにくくなります。
逆に、ギリギリのスペックのバッテリーでパススルーを行うと、回路がフル稼働して高熱になり、劣化を早めます。「大は小を兼ねる」は発熱対策において正解です。
比較表:パススルー利用時のタイプ別特性
| タイプ | パススルー適性 | 発熱リスク | 瞬断リスク | おすすめ用途 |
| コンセント一体型 | ◎(最適) | 低 | 低〜中 | 日常使い、スマホ充電 |
| 高出力モデル(65W~) | ◯(余裕あり) | 低 | 中 | ノートPC、タブレット |
| 安価な小型モデル | △(非推奨) | 高 | 高 | 緊急時のみ使用 |
| IoT対応モデル | ◯(特殊) | 低 | 低(要確認) | ラズパイ、監視カメラ |
まとめ:モバイルバッテリー パススルー 劣化
モバイルバッテリーのパススルー充電は、仕組みを理解して使えば決して怖いものではありません。
最後に、劣化を防ぎ長く使うための最重要ルールを再確認しましょう。
- 熱を持ったら即中止: パススルー充電中にバッテリーが「熱い」と感じたら、すぐに使用をやめて冷ましてください。
- ゲーム中の使用は避ける: 処理負荷の高いアプリを使いながらのパススルーは、バッテリーの寿命を削る行為です。
- 信頼できるメーカーを選ぶ: Ankerやエレコムなど、回路設計にお金をかけているメーカーの製品を選びましょう。
- 100%のまま放置しない: パススルーで満充電になったら、ケーブルを抜く癖をつけるだけで寿命は大きく伸びます。
便利な機能を正しく使いこなし、快適なデジタルライフを送りましょう。
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