スマートフォンのバッテリー持ちが悪くなり、モバイルバッテリーの購入を検討したとき、スペック表に書かれた「20W」「65W」「100W」といった数字を見て戸惑ったことはないでしょうか。
「数字が大きいほうが強そうだけど、値段も高い」
「自分のスマホには結局どれを選べばいいの?」
このように悩む方は非常に多いです。結論から言えば、この**「ワット(W)数」の違いは、充電スピードと対応するデバイスの違い**を意味します。ここを理解せずに購入すると、「充電が遅くてイライラする」あるいは「せっかく買ったのにノートパソコンが充電できない」といった失敗に繋がります。
この記事では、モバイルバッテリー選びで最も重要な「ワット数の違い」について、専門的な用語を極力噛み砕いて徹底解説します。mAh(容量)との違いや、飛行機への持ち込みルールなど、知っておくべき知識を網羅しました。
- ワット数(W)が大きいほど、スマホやPCへの充電速度が速くなる
- スマホなら20W、ノートPCなら65Wなど、デバイスごとに最適なワット数が違う
- モバイルバッテリー本体だけでなく、充電ケーブルも対応するワット数を選ぶ必要がある
- 自分の持っているデバイスの最大入力ワット数を知ることが、失敗しない選び方の第一歩
モバイルバッテリーのワット数の違いで変わる性能と基礎知識

モバイルバッテリーのパッケージやスペック表には、必ず「出力(Output)」として「〇〇W」という表記があります。この数値が具体的にどのような性能差を生むのか、基礎から紐解いていきましょう。
そもそも「W」とは?モバイルバッテリーのワット数計算と充電の仕組み
「W(ワット)」とは、電力が仕事をする大きさ、つまり**「電気のパワー」**を表す単位です。モバイルバッテリーにおけるワット数は、以下の計算式で成り立っています。
W(電力・ワット) = V(電圧・ボルト) × A(電流・アンペア)
- V(電圧): 電気を押し出す圧力
- A(電流): 流れる電気の量
- W(電力): 実際に供給されるエネルギーの総量
昔のiPhone(iPhone 11以前など)に付属していた小さな四角い充電器を覚えているでしょうか。あれは「5V × 1A = 5W」の出力でした。
一方で、近年の急速充電器は「9V × 2.22A ≒ 20W」や「20V × 3.25A = 65W」といった高い電圧と電流をかけ合わせることで、大きなエネルギーを生み出しています。
水道に例えると分かりやすい
ワット数の違いは、水道の蛇口とホースに例えるとイメージしやすくなります。
- 電圧(V): 水圧(水を押し出す力)
- 電流(A): ホースの太さ(一度に流れる水の量)
- 電力(W): バケツに水が溜まる速さ
ワット数が低い充電器は、細いホースでチョロチョロと水を出している状態です。これではバケツ(スマホのバッテリー)がいっぱいになるまでに時間がかかります。
対して、ワット数が高い充電器は、太いホースで勢いよく水を出している状態です。当然、バケツはあっという間に満タンになります。これが「ワット数の違い=充電速度の違い」と言われる理由です。
スペックのどこを見る?モバイルバッテリーのワット数の見方
モバイルバッテリーを購入する際や、手持ちの製品を確認する際、どこを見ればワット数が分かるのでしょうか。
基本的には製品の裏面や側面に、細かな文字でスペックが印字されています。ここでチェックすべきは**「Output(出力)」**の項目です。
表記の例
実際の製品には以下のように記載されていることが多いです。
- Output: 5V=3A / 9V=2.22A / 12V=1.67A
- Max Output: 20W
このように、複数の組み合わせが書かれていますが、最も重要なのは**「最大出力(Max Output)」**の数字です。ここの数字が「20W」であれば最大20Wで充電でき、「65W」であれば最大65Wで充電できる製品ということになります。
USB-CとUSB-Aの違いに注意
最近のモバイルバッテリーは、USB-CポートとUSB-Aポートの両方を搭載しているものが一般的です。ここで注意が必要なのが、**「ポートによって最大ワット数が違う」**という点です。
| ポート種類 | 一般的な最大出力 | 特徴 |
| USB-C (PD) | 20W ~ 140W | 急速充電(Power Delivery)に対応。高出力が可能。 |
| USB-A | 10W ~ 18W | 従来の規格。最近のスマホやPCの充電にはパワー不足なことが多い。 |
「65W対応!」と大きくパッケージに書かれていても、それはUSB-Cポートを使った場合のみというケースがほとんどです。急速充電を行いたい場合は、必ずUSB-Cポートを使用しましょう。
「mAh」と混同しがち?ワット数の平均的な数値と容量の違い
初心者の方が最も混乱しやすいのが、「W(ワット)」と「mAh(ミリアンペアアワー)」の違いです。
- W(ワット): 充電の**「速さ・パワー」**
- mAh(ミリアンペアアワー): バッテリーの**「容量・スタミナ」**
これも車に例えると分かりやすいでしょう。
- Wは「エンジンの馬力(スピード)」
- mAhは「ガソリンタンクの大きさ(どれだけ走れるか)」
「10000mAhの大容量!」と書かれていても、出力が「5W」しかなければ、満タンにするのに一晩かかってしまうかもしれません。逆に「100Wの高出力!」でも、容量が「2000mAh」しかなければ、PCを少し充電しただけですぐに空っぽになってしまいます。
ワット数の平均的な数値(目安)
現在販売されているモバイルバッテリーの平均的なワット数は、用途によって二極化しています。
- スマホ用(小型・軽量)
- 平均:20W ~ 30W
- スマホを最速で充電するために必要なライン。
- ノートPC用(中型・大型)
- 平均:60W ~ 100W
- PCを動かしながら充電するために必要なライン。
昔ながらの「5W」や「10W」のモバイルバッテリーは、現在のスマートフォンのバッテリー大容量化に伴い、充電スピードが実用的ではなくなりつつあります。今から購入するなら、最低でも20W以上の製品を選ぶのが「平均的」な基準と言えます。
モバイルバッテリーのワット数の違いを見極める選び方の基準

基礎知識を理解したところで、次は「自分には何ワット必要なのか?」という具体的な選び方について解説します。デバイスごとに必要な電力は決まっており、これを下回ると充電できなかったり、極端に遅くなったりします。
【デバイス別】スマホ・タブレット・PCのモバイルバッテリー出力目安
お持ちのデバイスに合わせて、推奨されるワット数を以下の表にまとめました。
| デバイスの種類 | 必要な出力目安 | 推奨ワット数 | 備考 |
| イヤホン・スマートウォッチ | 1W ~ 5W | 低電流モード搭載機 | ワット数より、微弱電流で充電できる機能が重要 |
| iPhone (12以降) | 20W | 20W ~ 30W | Apple公式では20W以上で30分で50%充電可能 |
| Android (一般的な機種) | 18W ~ 30W | 30W | Google PixelやXperiaなど |
| iPad / タブレット | 20W ~ 30W | 30W | 20Wでも充電可能だが、30Wあると快適 |
| MacBook Air / 一般ノートPC | 30W ~ 45W | 45W ~ 65W | 30Wだと使用中の充電は緩やか。45W以上推奨 |
| MacBook Pro / 高性能PC | 60W ~ 100W | 65W ~ 100W | 高負荷時は100W近い電力が必要 |
| ゲーミングノートPC | 100W以上 | 100W ~ 140W | 専用アダプタ以外では充電できない機種もあるため要確認 |
「大は小を兼ねる」は本当?
「スマホしか充電しないけど、将来PCを買うかもしれないから100Wのバッテリーを買っておこう」
これは正解です。USB PD(Power Delivery)という規格に対応している製品であれば、接続されたデバイスに合わせて自動的に最適なワット数に調整してくれます。
例えば、100W出力可能なモバイルバッテリーでiPhone(最大20W~27W程度)を充電しても、バッテリー側が自動で出力を抑えてくれるため、スマホが爆発したり故障したりすることはありません。ただし、高出力なバッテリーほど**「サイズが大きく」「重く」「価格が高い」**というデメリットがあるため、持ち運びやすさとのバランスを考える必要があります。
迷ったらこれ!用途で選ぶモバイルバッテリーの出力おすすめパターン
ワット数の違いによる具体的なおすすめ構成を3つのパターンで紹介します。
パターンA:スマホの充電がメインの人
おすすめ出力:20W ~ 30W
iPhoneやAndroidスマホの充電切れ対策なら、このクラスがベストです。
- メリット: 非常にコンパクトで軽量(100g〜200g程度)。カバンに入れても邪魔になりません。
- 代表的な製品: Anker Nano Power Bankなど
パターンB:スマホもiPadも、たまにMacBook Airも充電したい人
おすすめ出力:45W ~ 65W
カフェで作業をするノマドワーカーや学生に最も人気のゾーンです。
- メリット: スマホなら超急速充電、ノートPC(MacBook Airクラス)も通常速度で充電可能。1台で全てのデバイスをカバーできます。
- 注意点: 複数ポート使用時に出力が下がる製品が多いため、詳しく仕様を確認する必要があります(例:単ポート65Wだが、2ポート同時だと45W+20Wになるなど)。
- 代表的な製品: CIO SMARTCOBY TRIOなど
パターンC:MacBook Proや高性能Windows PCを持ち歩く人
おすすめ出力:65W ~ 100W以上
プロのクリエイターやビジネスマン向けです。
- メリット: コンセントがない場所でも、PCのパフォーマンスを落とさずに作業を継続できます。
- 注意点: バッテリー本体が重くなります(350g〜500g以上)。また、バッテリー本体への充電(入力)も高出力に対応している必要があるため、使用する充電器(ACアダプタ)も高出力なものを用意する必要があります。
意外と見落とす「ケーブル」のワット数対応も重要
「高いお金を出して100Wのモバイルバッテリーと最新のスマホを買ったのに、充電が遅い!」
このようなトラブルの原因の多くは、**「ケーブル」**にあります。
実は、USB-Cケーブルには以下の2種類が存在します。
- 60W対応ケーブル(3Aケーブル): 一般的なケーブル
- 100W/240W対応ケーブル(5Aケーブル): 高出力対応ケーブル
どれだけバッテリーの出力が高くても、ケーブルが60Wまでしか対応していなければ、65W以上の電流を流すことはできません。特にノートPCを充電する際は、必ず**「e-Marker」**というチップが内蔵された100W対応(5A)ケーブルを使用してください。
詳しくは各メーカーの公式サイトでも解説されています。
機内持ち込みに制限あり!モバイルバッテリーのワット数と飛行機の規定
旅行や出張で飛行機を利用する際、モバイルバッテリーは「預け入れ荷物(スーツケース)」に入れることはできず、必ず**「手荷物」として機内に持ち込む必要があります。 この時、持ち込めるバッテリーには制限がありますが、ここで問われるのは「W(ワット数)」ではなく、「Wh(ワット時定格量)」**です。
Wh(ワットアワー)の計算方法
多くの航空会社では、100Whまたは160Whを制限のラインとしています。しかし、モバイルバッテリー本体には「mAh」しか書かれていないことが多いです。その場合、以下の計算式でWhを算出します。
Wh = mAh ÷ 1000 × 3.7V(リチウムイオン電池の定格電圧)
【計算例】
- 5000mAhのバッテリー: 5000 ÷ 1000 × 3.7 = 18.5Wh (余裕でOK)
- 10000mAhのバッテリー: 10000 ÷ 1000 × 3.7 = 37Wh (OK)
- 20000mAhのバッテリー: 20000 ÷ 1000 × 3.7 = 74Wh (OK)
- 30000mAhのバッテリー: 30000 ÷ 1000 × 3.7 = 111Wh (航空会社によっては個数制限や申請が必要なゾーン)
- 50000mAhのバッテリー: 50000 ÷ 1000 × 3.7 = 185Wh (持ち込み不可の可能性大)
出力ワット数(W)が高くても、容量(mAh)が常識的な範囲であれば、ほとんどの場合機内持ち込みは可能です。ただし、超大容量モデルを持っている場合は、事前に利用する航空会社(JAL、ANA、LCC各社)の規定を確認することをおすすめします。
まとめ:モバイルバッテリー ワット数 違い
モバイルバッテリー選びにおける「ワット数の違い」は、快適なデジタルライフを送れるかどうかの分かれ道です。
最後に、今回の記事の要点を振り返ります。
- ワット数(W)=充電スピード。 数字が大きいほど速く充電できる。
- スマホだけなら20W、PCも充電するなら65Wを目安にする。
- **「大は小を兼ねる」**ので、迷ったら高出力モデルを選ぶのもありだが、重さに注意。
- 高出力(60W以上)を利用する場合は、ケーブルも100W対応のものが必要。
- 飛行機への持ち込みはワット数ではなく**Wh(ワットアワー)**で計算する。
「ただ充電できればいい」という時代は終わりました。これからは、自分の持っているデバイスに合わせた「最適なワット数」を選び、ストレスのない最速充電環境を手に入れましょう。まずは、お手持ちのスマホやPCが必要としているワット数を調べるところから始めてみてください。
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